大好物のヒラメが食べたい。がん闘病後の決断

70代でがん治療をされていた患者さんです。下の歯が総入れ歯でご飯が噛みづらく、食事はすべて奥さんがすり潰したものを用意していたといいます。

それまで通っていた医院で、歯をすべて抜いたものの、抗がん剤の服用を理由にその先の治療が中断。途方に暮れていた時、当院に通っていた奥さんに勧められて受診されました。

ご主人の様子を心配された奥さんから相談を受け、インプラントの説明をし、「ご本人が来られる気になったら、連れてきてください」とお伝えしておきました。

もともと食べることが好きだった方なので、ご自身の歯を使って食事ができないことは相当なストレスになっているようでした。抗がん剤の副作用が落ち着き、体調がよくなった頃を見計らって、1日プラントで下の歯すべてをインプラントにすることになりました。

手術自体は非常に順調でした。歯はすべて抜かれていましたが、歯茎や骨は健康な状態だったことが功を奏し、通常10時間くらいかかる手術が、7時間で終わったほどです。

術後は、大好物の平目のお刺身を思う存分食べられると喜んでいただきました。それまでは、野菜を煮てミキサーにかけたものや、しらす干し、納豆など噛まなくても食べやすいものをお粥の上に載せて召し上がっていたとのこと。夜は、マグロをフォークで潰してトロロをかけるなど、メニューにバリエーションを持たせるため、食事を用意する奧さんも大変だったと聞いています。

インプラントにしてからは、話し方もスムースになった印象です。食事がきちんととれるようになって、体重が増え、顔つきも健康的に。

「今では何を食べても美味しい。自分の歯じゃないと食べ物の味がわからないものなんです。インプラントにして本当によかった」という言葉には、私はもちろん、奧さんも喜んでくださいました。

【治療期間】
3週間(もともと義歯で通院。インプラントにしたいとお話されてから3週間後に「1日インプラント」の手術を行い、手術当日に歯が入り終了)。

【費用】
150万円(税別)

【リスクと副作用】
オペや仮歯作製時期により、手術当日に仮歯が入らないケースもあります。インプラントを入れた方は数カ月に一度のメインテナンスが必要です。メインテナンスや日常の歯磨きを怠ると、インプラント周囲炎が起こることがあります。